2016年5月12日木曜日

第92回【金沢歴活】新3大・絶対に観ておくべき桃山芸術

2016/05/12
於cafe素都
文責 髙橋勇太

【新3大・絶対に観ておくべき桃山芸術】

今回は絶対に観ておくべき桃山芸術と題しまして、実際に私が観てきた中でオススメの作品をご案内。




◆そもそも安土桃山時代(1573〜1615)ってどんな時代?

政治史では室町幕府滅亡(1573)から関ヶ原の合戦(1600)まで僅か27年。
文化史では豊臣氏滅亡(1615)まで、どちらにせよ半世紀にも満たない、中世から近世への変わり目。
戦国の混沌と江戸の安定の狭間。
時代の一大転換期。
下剋上の気運高まり信長や秀吉ら天下人が登場。裕福な商人も活躍と、非常にエネルギッシュな時代で芸術においては覇気と生命感に溢れる作品が大本流だがその一方で“侘び”の美意識も誕生した。
とにかく忙しい時代。

新3大・1つめは、、
❶狩野永徳【唐獅子図屏風】


どんな人?
狩野派と呼ばれる画壇の棟梁で京都で活躍、織田信長や豊臣秀吉ら天下人の御用絵師として活動し当時の画壇の頂点に君臨した。
信長〜秀吉という稀代の為政者から次から次に仕事の依頼が来すぎてその死因は一説には過労死といわれる。

作風は?
若い頃は細密画〜壮年以降はダイナミックな障壁画が多くなる。特に晩年は筆づかいが荒々しく乱暴な書きっぷりが必見。
基本的に水墨画も細密画も障壁画もなんでもござれ。
個人的には“桃山という時代の空気”をひしひしと感じられる風俗画や大画面の迫力たっぷり障壁画がオススメ。

っでこの作品の見どころは?
何と言っても、獅子がのっしのっしと歩くような豪快で生き生きとした様、迫力、【目力】のすごさ!
ぜひ獅子に睨まれてほしい一品。

新3大・2つめは、、
❷長谷川等伯【松林図屏風】

どんな人?
能登七尾出身の画家。
30代で一念発起して妻子を連れて上京。
当時、桃山画壇の寵児であった狩野永徳に真っ向勝負、永徳の死後は秀吉からの依頼で瑞雲寺の壁画を任され桃山画壇の勢力図を塗り替えた。
千利休とも懇意にし、日本的水墨画の完成ともいわれる「松林図屏風」を生み出した。

作風は?
七尾時代は繊細かつ清新な、仏画を多く手がけるが京都にのぼってからは華麗な金碧画も描く。
圧倒的な力強さの永徳に対し等伯は風や大気を描き情感豊かな水墨画様式を完成させた。

っでこの作品の見どころは?
唐獅子屏風より一回り小さいような大きさで、案外小ぶり。そして背景の紙部分も黄ばんでいたりと写真と実際には大違いなんですが、画から霧が滲み出てくるような感じは実際に見ないと分からない。幽玄な、といえばいいのかな。幽かに玄く、霧が流れてくる雰囲気、体感いただきたいですね。

新3大・最後はこちら

❸長次郎【ムキ栗】


どんな人?
現代まで一五代続く窯元樂家の祖。
千利休の美意識を反映した茶碗の作り手として知られる。
生没年不詳でその生涯は不明な点も多いが中国からの渡来系移民の子孫といわれる。

作風は?
樂焼は轆轤を使わず手で捏ね上げるため素朴な、自然な姿を残す。
同時代の茶碗と比べると長次郎は幾分小ぶりな寸法でその形はいわゆる宗易形(利休形)とよばれ色は黒とも赤とも表現できないような、土そのものの風合い。樂歴代の中でも長次郎の“色”は一線を画す。

っでこの作品の特徴は?
長次郎の茶碗って当代の樂吉左衞門さんも指摘している通り、黒なのか赤なのか醜いのか美しいのか分からない、理解できないことが魅力だと思う。

このムキ栗なんて特にそう。
すごい肌してる。
色もよう分からないけど形も凄くて、上から見ると方形と円形が重なり合っていて更に井戸のような底なしの深さを感じる。宇宙ですよ。
見るとなんとも言えない気分になりますがこれは実際に見てほしいな。


以上、新3大・絶対に観ておくべき桃山芸術でした!

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